私的石ノ森館[感想の部屋]

		
平賀源内◆解国新書

 江戸の改革を強引ながらも行った田沼意次と同時代を生きた平賀源内、実は源内は獄死を免れ生きてこの田沼意次の一代記「解国新書」を書き上げた。こんな設定で山之内教授と紅葉(ゆづりは)緑がその書を読み上げていくストー リー構成。現代と江戸時代が切り替わる場面は石ノ森氏の技腕で効果的な運び方となり物語の展開は現代の様子と交えての分かりやすい内容として描かれて いる。七つの目を持つと言われた田沼の相棒として共に歩む源内、田沼の改革 と相次ぐ不況、エレキテルと弟子の裏切り。二人を中心にして物語は進む。昔歴史で習ったそんな事柄が登場し、さらにそれがわかりやすく読みやすい。こ れは一度読む価値がある作品である。

初出「ビジネスアクション」1987年8月号〜’88年4月号

豪華愛蔵版 人造人間キカイダー1

 ゼペットじいさんは人間に似せたピノキオを作った、光明寺博士は人間に似 せたジローを造った。不完全な良心回路(ジェミニィ)をのせて…。     キカイダーことジローは光明寺博士の息子一郎に似せて造られたロボットであ る。彼の使命は博士がこれまでに造った12体のロボットを倒すこと、それら のロボットはプロフェッサーギルの思うままに操られるため、ジローには自分 で考える力を持たせる良心回路を埋め込まれた。しかしそれは不完全なもので ギルの発する超音波により自我と服従する二つの立場で悩み苦しむ、そして兄 弟でもあるロボットを相手に戦うことへの苦痛も伴いながら戦い続ける。   TV版と比べるのは石ノ森作品ではもうやっちゃいけないことで(笑)これま での作品通り苦悩するヒーロー像を描いているが、ロボットということである 程度はあっけらかんとした態度を見せるジローが救われる。苦悩する心が中途 半端な戦闘形態を形成する、博士の娘ミツコにその姿を二度と見られたくない という一心からあえて変身せず戦いを試み、そして誰との接触をも避けるため に日本を飛びだすが、ミツコの助けがなくては修理も満足に出来ない自分に気 づいてしまう。不完全な”心”を持ったためにより人間らしくなってしまった ジローは…(以下2に続く)                     

宇宙鉄人キョーダイン

 TVシリーズ原作として最後に描かれたいわく付きの作品でもある。名称は「  兄弟」と数字の単位「京」、それと重さの単位「ダイン」を掛け合わせてある。 葉山研究所から突然消えたケンジの父と二人の兄リュージとジョージはダダ星 へとさらわれていた。そこから仮の姿で地球へと帰ってきた二人は地球が機械 文明のダダ星人に支配される危機を救うためケンジの前に姿を現す。ダダ星人 の執拗な攻撃もキョーダインの活躍により阻止されるがその攻撃方法が変わる とともに人間による破壊が始まる。3次元映像による巨大ロボットの登場で人間はパニックに陥る。自衛隊の出動 で攻撃を開始するがそこには実態が存在しない、そしてダダ星人が手を下すま でもなく破壊は続けられる。人間の「心」を巧みに利用したこの作戦はかつて ダダ星人とよばれるロボットを作った人間を滅ぼしそして効率良く征服するた めの実験として行われたものである。指令円盤ロボットにさらわれたケンジの 活躍で巨大ロボットは姿を消す。しかし最も恐ろしい敵とは人間同士の不信や 恐怖心といった心ではないかという恐れを残してプロローグ編のみで話は終わ ってしまう。TVシリーズの原作物としての限界を感じたのかそれとも何らか の理由で連載を続けられなくなったのか作品が素晴らしいだけに悔やまれると ころである。

初出「月刊少年マガジン」1976年4月号〜7月号
併録「ROBOT」「UFO」「ノストラダムスの妖星」

イナズマン

 カゼタサブロウは人並外れた能力を持つ、しかしそれは親から受け継いだも のでありその能力のためにバンバに狙われる。超能力を保持する人間を新人類  と呼びその選ばれた人間で地球を支配しようとするバンバに対抗するのがサラー 率いる少年同盟、その一員でもあるリヨン(場面によってはリオンと表記され てるのは言わないことにして)によってサブロウの潜在能力が引きだされる。 「チョウのように変態できる」と言う言葉を真に受けてかサブロウはまるで蝶 がサナギから羽化するようにサナギマンという形態から最終形態のイナズマン へと変身をする。この姿こそがサブロウの超能力を極限にまで上げることが出 来るのだ。                                この作品中気になるエピソードが2つある。一つはキカイダーが登場する「 ギターを持った少年」編、TV版では「キカイダー」「イナズマン」共に伴直 弥氏が主役を演じているので実現は無理だったがこれこそ漫画だからできるも のでありイチロー、ジロー、サブロウという主人公を持つ何か因縁めいた流れ を持つこの両作品の一つの形として興味深い話である。そうそしてここで「人 造人間キカイダー」という作品は一つの終局を迎えるのである。そしてもう一 つがサブロウの育ての親が爆発事故に巻き込まれて死亡するエピソードに登場 するルビィ。サブロウの執拗な追跡により彼女の仲間でもあるJ.D.Pのグル ープは壊滅に追いやられるがルビィを連れて敵の手から逃げるサブロウ。二人 の心を一つにしないとテレポートで逃げることが出来ない。「アンタはまだ心 の底ではアタイを憎んでいるのよ…!!」ルビィの言葉に偽りはなかった。迫る 敵をサブロウはどう切り抜けるか?これはぜひ原作を読んでもらいたい 物語は超人戦記編へと進む。バンバとの最終戦争は月の上、サブロウは隙をつ かれバンバの元へと洗脳手術を受け連れてこられる。それを救ったのはバンバ  の兄でもあるサラーだった。悲しき兄弟はそこで果て、少年たちに未来を託す。 「…子どもたちよ…未来は君たちのものだ……!!」

初出「週刊少年サンデー」1973年8月13日号〜’74年9月15日号

ひみつ戦隊ゴレンジャーごっこ

 週刊連載でTV番組タイアップ作品は展開の難しさから話が波状してしまう のか、なぜか作品はギャグ漫画へと転向、こんな事が許されるのだろうか?し   かしこういうことってよくあることなのだ。そしてこの「秘密戦隊ゴレンジャー」  は突如シリアス路線からギャグ路線への変更となった。あがり性の赤レンジャー 外人(ハーフ?)のアオレンジャー、カレー大好きキレンジャー、おませなモ モレンジャー、まだまだガキンチョのミドレンジャー。この5人が町内の平和 を脅かすガキ十字軍総統イジワリさんばあを相手に繰り広げる戦い(?)はロ ボコンの登場によりまたもやギャグに火がついてしまう。さらに後半はガキ十 字軍総統の交代という王道の展開を迎えるがその総統が露出狂の渡スケ兵衛、 次第に展開はギャグありお色気ありと変わっていく。もうそこにはシリアス路 線の面影はない。しかしそれを嘆いたのは読者だけではなかった、総統の座を 奪われたイジワリさんばあの再登場により少しまじめにごっこをやろうと5人 は決意する(笑)もともとこのばあさん、政府がおざなりにしている老人問題 や不景気を粛正するためのレジスタンス行為をやっているのだ。まぁそれが何 故町内で悪さをしているのかは愛嬌としてもこんなところにも石ノ森テイスト があふれる作品となっていて興味深いところだ。ちなみに最終回の敵はおわり 仮面、老いらくの恋に破れたイジワリさんばあは老いらくのコエ(溜め)に落 ちあっけない終わりを遂げる。じつに潔いオチだったりする。…そうか?(^^;

初出「週刊少年サンデー」1975年8月17日号〜’76年6月6日号
  「小学5年生」1975年8月号〜’76年2月号